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ダンスミュージカル クラリモンド

「クラリモンド」を母の日に観に行ってきました。
ダンスミュージカルと銘打たれているのが、不思議で仕方なかったのですが、
観終わってみると納得。
セリフの全てが歌になっているのではなく、状況や感情などがダンス、
それも音にあわせるだけではない肉体の全てを使った、演技としてのダンスで
綴られていく作品でした。その行間を、華麗な言葉と、歌でうめられていく、
いままでにはないタイプのミュージカルであったかと思います。

舞台は一瞬一瞬が緻密に計算しつくされ、その緊張感に、拍手やまばたき、
呼吸さえも躊躇われるほどで、静寂が支配する劇場は、
歓客の息さえもとまっているように思えます。
だからこそ、一人対作品として作品にのめり込め、その濃密な空気に身を沈め、
クラリモンドの魅力に目をこらすことができる、
いい意味での連鎖が起こっていたように思います。

最初は、流れにのまれるばかりで、
神に仕えるロミュオや、悪女クラリモンドの感情がよくわからなかったのですが、
視点をクラリモンドにあわせると、途端にこの作品が
深く甘美で、人間なら誰もが望むであろう愛の物語であると気づくのです。
そう思ったら、もう涙が湧いてきてしまいました。

生きながらの死を選ぶのか、死ととなりあわせの愛か。
どちらの生を選ぶのか、と迫られたとき、きっと表れる人間の弱さと感情のゆらぎ。
十字架をはずすことは出来ても、長年腕をとおしてきた礼服を、
脱ぐことの出来なかったロミュオ。そんな細部にまで、表現されていることに驚きます。

一音一音奏でられるピアノ、効果をもになう斬新なタップダンス、
感情の全てを表現していく歌、狂気と絶望までも表現するダンス、
美しく響く情熱の言葉。
各パートの全てが一体とならなければ完成しない舞台、クラリモンド。
いまも彼女の歌声が、耳にこだまします。
無償の彼女の愛と歌声に、また深く浸りたい。そう思う濃厚な作品でした。